既に絶版となって60年近くになる富士重工製のラビットスクーター。
長く所有していて、或いはやっと手に入れて、いずれにしてもラビットスクーターの整備で苦労していませんか?
今回は、「暗い」「球切れする」「パーツが手に入らない」で困るヘッドライトのLED化について公開します。
ヘッドライトの改善については、いくつか方法があるかと思いますが、実際にサイト管理人ガナが実施した方法を紹介します。
対象車輛:S301B
今回は、S301Bとなります。
ヘッドライト周りでは当時モデル間で装備大差は無いと思いますが、ライトと車体ハーネスの接続がソケット接続タイプとギボシ接続タイプの2種ある様です。
今回はギボシタイプです。
それでもヘッドライト自体の構造が当時のものと現在では異なる事情があります。
それが次章で述べるシールドビームヘッドライトというものです。
シールドビームヘッドライトとは
当時の車輛はメーカー問わず二輪も四輪もヘッドライドはシールドビーム一体型が普通でした。
シールドビームというのは通電で発光するフィラメントと反射板、レンズが一体となった構造です。
長時間の通電(発光)でフィラメントが劣化し焼損すると球切れとなり一体構造のため丸ごと交換する必要がありました。後にレンズと反射板のみが一体構造となり、フィラメント球(バルブともいう)のみを交換するスタイルが永く続きました。その後、フィラメントバルブがLED化、最近ではLED一体側ヘッドライトが二輪でもメインになっています。
今までの修理方法
シールドビームの旧車の場合、世の中にすでに新品での交換用バルブがほぼ入手不可能のなため修理はかなり困難なものでした。
そうは云っても4輪車であればニーズがまだ多いため丸形ライトであれば、
「交換式のフィラメントまたはLEDバルブ+市販の丸形レンズユニット」
で対応しやすいかと思います。
ですが、2輪の場合ですと、以下の理由で修理は困難でした。
- レンズ径が4輪用より小さいため、4輪用パーツが使えない
- もともとのシールドビーム固定方法がメーカー/車種によって違うため他車流用も出来ない
それでも何とか苦労して修理できたとしても
- 現在手に入る車輛のパーツで使えそうなものを試行錯誤で捜索し、固定部を改造して取り付け
- フィラメントが切れたシールドビームをバルブ交換式に改造して、バルブのみ交換
という問題がありました。
ただいずれの方法で改造出来たとしても光軸の調整や市販パーツでも固定のための改造が必要だったりと作業はほぼワンオフ(常に個別対応が要る)作業でした。
LED化への方法
前に述べたように上手く適合するものがあれば、LED一体型に付け替えてしまうのが簡単です。
が、そうそう絶版品の車輛に対して、現代車輛のパーツがポン付けで一致するものを探すのは困難だと思っています。
そこで今回は、市販パーツで使えるものが見つかったので
- 車輛よりシールドビームの取り外し
- 市販の丸形ヘッドライトケースと交換式LEDバルブの購入
- ヘッドライト配線の変更
- 手に入れたヘッドライトケースとLEDバルブの車輛への取り付け
という方法によりヘッドライトのLED化に成功しています。
必要なパーツと工具
今回用意したものは以下となります。
- ヘッドライトケース:MAD MAX社製、ミニバイク用マルチリフレクターヘッドライト、レンズ径Φ130mm、税込み3500円前後
- LEDバルブ:M&Hマツシマ製、PonLED PH7、PL004、交直両用、税込み2200円前後
- 接続用配線パーツ:ギボシ端子、ホームセンターやカーショップで入手可、500円前後
- ハンドツール:ドライバー、ラジオペンチなど以外にカシメ工具
それぞれ詳細を紹介します。
MAD MAX ミニバイク用マルチリフレクターヘッドライト
ヘッドライトケースに反射板、レンズ、レンズリム、反射板抑えバネ2本、PH7バルブにソケットがセットになっています。
ケース、レンズ、反射板はいずれも樹脂製で軽いのですが、衝撃に対してはあまり強度は無いようです。
他のメーカー・製品にあまり選択肢はなく、一番の決め手はレンズ径Φ130mmでラビットスクーターS301シリーズにマッチします。
今回は、この中から反射板、レンズ、ソケット、反射板抑えバネ2本のみを利用します。
PonLED PH7バルブ
世の中には中華製も含めてミニバイク用の交換式LEDバルブがすでに数多くリリースされています。
今までヘッドライトのLED化を検討していましたが、なかなかラビットスクーターにマッチするものがなく躊躇していましたが、やっと満足するものに出会えた感があります。
- 安心の日本メーカー
- バルブ本体に付属パーツがなくシンプル
- 割と安価
実際のバルブを上から見ると構造がよく判ります。
左側がソケット側、右がヒートシンク、LEDチップは左右に配置されています。
ギボシ端子とカシメ工具
古い車輛の配線接続部にはほぼこのギボシ端子が使われています。
このギボシ端子と線をつなぐために専用のカシメ工具(圧着工具とも云う)を使います。
機械的に圧接するだけなのでペンチ・ラジオペンチでも良さそうに思えますが、圧接不足だと電気的接触不良を誘発し、断線同様事象を起こすか使用場所によっては発熱、最悪火災となるので専用工具使用をお薦めします。
実際の作業
まずヘッドライトケースの中から反射板、レンズ、ソケット配線、反射板抑えバネ2本のみを利用します。
注)写真ではソケット配線右側に黒いコネクター部品がついていますがサイト管理人自身が追加したものです
更に組み付ける前に反射板についているバルブレフステーを外しておきます(下の写真内赤丸の部品)。
恐らくフィラメント製バルブの直接光が前方に照射しないように遮るものかと思いますが、そのままだと今回はLEDバルブが当たってしまいます。
元々のヘッドライトリム(ヘッドライトを車体に固定するためのリング)にレンズ、反射板をセットし、反射板抑えバネでこれらを固定します。
コツはリム裏側にあるちょっとした出っ張りにバネ先端を引っ掛けることと、リムを車体に固定するステー付近にセットすることです。
更に表側のレンズは、リムに対して全体的に下側のレンズのフチがリムに当たるようにします。
理由は、次章の光軸調整で明らかにします。
そして、車輛側のヘッドライト配線(ギボシメス)に合うように今回手に入れたヘッドライトケースに付いてきたバルブソケットの配線にギボシオスを追加します。
注)下の写真では配線中間に黒いコネクタを追加してありますが、実用上無くても構いません
動作確認と光軸調整
配線接続が終わればヘッドライトユニット全体を車体に固定する前に動作確認を行います。
IGキーシリンダーをライトオン、更にディマー切り替えのフットスイッチを何回か踏んでHiとLoが切り替えできればOKです。
この時、LEDバルブをよく観察してみると、Hiの時にLo側も点灯のままになっているかと思いますが、このPonLEDバルブの特徴ですので問題ありません。
点灯確認が出来たらヘッドライトユニット全体を車体に固定して、光軸を確認します。
実はここが今回の一番の課題で、LED化したことで光軸調整機構が無くなってしまいました。
ですが、リムとレンズの間に何か緩衝材(ここでは折りたたんだ紙)を挟み込み、この厚みまたは挟み込む具合を調整することで上下光軸を調整することが可能となります。
一見、時代遅れの方法ですが、レンズは裏側から抑えバネにより固定されいるので、実用的には問題ありません。
点灯比較と使用感
カメラの撮影条件(絞りとシャッタースピード)を同じにして撮影してみました。
・オリジナルシールドビーム(左:Lo、右:Hi)
LEDに換装後(左:Lo、右:Hi)
如何でしょうか?コントラスト差が顕著に出ていますが、実際に見た感じではコントラスト差よりは圧倒的な明るさに目が向き、ライトだけは現行車に負けない仕様となりました。
夜間走行でも全く問題無く、元々直流点灯であるのも関係しているのかアイドリング時のちらつきもありません。
まだLED化して数10km走行程度ですので、長期信頼性・耐久性についてはこれから実地テストとなります。
ラビットスクーターの整備でヘッドライトをLED化する方法のまとめ
いかがでしたでしょうか?
実際にサイト管理人自身が作業した時間と購入したパーツの実績を挙げると、
作業時間:約3時間
費用:約6000円
となります。
最後となりましたが、今回のLED化でのメリット・デメリットを挙げておきます。
まず、メリットから。
- 純粋にLED化のメリットを享受できます(以下の内容)
- 明るいので視認性や夜間走行時の安全性向上
- 省電力なのでバッテリー負担が低減
- 長寿命な上にバルブ交換式なので、切れても手に入れやすい
ですが、デメリットとして
- 今回の改造では、上下の光軸合わせがやりづらい
- オリジナルの拘りには反する(当時モノに徹する方には不向きかも)
- 更にいうと、明るすぎるのでビンテージの雰囲気を壊す(ライトだけが最新ってのもアンマッチ)
となるでしょうか。
そうは云っても日常遣い、それも夜間走行もする方にはLED化のメリット享受の方が多いと思います。
あとはオーナーの好みによるところが大きいかと思いますので、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
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